第25回「ベトナムの最低賃金の動向_2022年」

ベトナム駐在員レポート

-ベトナム現地レポート-

「ベトナムの最低賃金の動向_2022年」

ベトナムは豊富で安価な労働力があり、製造業を中心とした多くの日系企業が進出しています。その中で最低賃金は重要なキーワードでありますが、2021年は新型コロナウイルスの影響により、初めて据え置きとなりました。2022年は新型コロナウイルスからの経済回復が見込まれており、最低賃金の引き上げが議論されています。今月は、2022年の最低賃金の動向についてレポート致します。

 

  • 最低賃金とは?

最低賃金は労働法45/2019/QH14に以下のとおり、規定されています。

<第91条 最低賃金>

  1. 最低賃金とは、経済・社会の発展状況に応じた、労働者とその家族の最低限度の生活水準を保障するために、通常の労働条件の下で最も単純な業務を行う労働者に対し支給される、最も低い賃金額である。
  2. 最低賃金額は地域ごとに定められ、時給・月給で決定される。
  3. 最低賃金額は、労働者及びその家族の最低限度の生活水準、最低賃金額と市場の賃金額との相関、消費者物価指数、経済成長の速度、労働需給関係、雇用及び失業、労働能率、企業の支払能力に基づき調整される。
  4. 政府は、本条の詳細を定め、国家賃金評議会の勧告に基づき最低賃金額を決定し、公表する。

賃金は基本給・手当・その他支給金から構成されており、最低賃金は基本給として理解されていますので、基本給が最低賃金を下回らないように設定しなければなりません。また、最低賃金は地域毎(第1地域から第4地域)に分けられており、通常は毎年1月1日より新しい最低賃金が適用されます。

 

  • 最低賃金の動向_2022

2022年の最低賃金の動向ですが、2022年4月12日に国家賃金評議会で最低賃金の引き上げを2022年7月に実施することで合意しました。国家賃金評議会は賃金調整を実施するベトナム政府の諮問機関であり、政府、雇用主、従業員および労働組合の三者代表によって構成される機関です。この国家賃金評議会で了承を得た草案が首相府に提出され、首相の最終判断後を経た後に、政令として発令されます。

現状の草案を基に最低賃金の動向を纏めましたので、以下をご覧ください。

<➀ 最低賃金、GDP(国内総生産)、CPI(消費者物価指数)の推移>

<➀ 最低賃金、GDP(国内総生産)、CPI(消費者物価指数)の推移>

<② 地域別最低賃金の推移>

<② 地域別最低賃金の推移> 

第1地域…ハノイ市・ホーチミン市・ハイフォン市・ビンズン省・ドンナイ省の都市部など

第2地域…ハノイ市・ホーチミン市の郊外、ダナン市、カントー市、バクニン省など

第3地域…ハナム省、ロンアン省、ラムドン省、キエンザン省など

第4地域…第Ⅰ~Ⅲ以外の地域

*地域分類は、新政令によって変更となる可能性があります。

<ベトナム統計総局のデータを基に筆者作成>

最低賃金は2017年から平均6%/年ずつ上昇しておりましたが、新型コロナウイルスの影響により、2021年は据え置きとなりました。2022年は経済回復が見込まれることから、前年対比平均5.9%の引き上げが予定されています。

 

  • 最後に

今年、最低賃金が引き上げられますと、約1年半ぶりとなります。一方で、経済界からは新型コロナウイルスの影響により業績が完全に回復していないとし、最低賃金の引き上げ時期を2023年1月に延期するよう求める声もあります。2022年の最低賃金が草案通りに引き上げられるのか、注目されます。

以上

(1ベトナムドン≒0.0056円)

 KIRABOSHI BUSINESS CONSULTING VIETNAM CO.,LTD.

 福田