ベトナムも世界的な流れと同様に、ガソリン・ディーゼルエンジン車を段階的に廃止するためのロードマップの策定を進めており、2030年に向けた環境保護戦略ではEVを促す方針を定めています。今回のレポートでは、ベトナムのEVについて取り上げます。
- ベトナムローカル企業初のEV「ビンファスト」
ベトナムは2022年4月13日にファン・ミン・チン首相がガソリン・ディーゼルエンジン車を段階的に廃止し、EVを推進する環境保護戦略を承認しました。世界的な流れと同様にEVが今後広がっていくことが予想されますが、EVの展開においては、政府の支援策が限定的であることや、ベトナム科学技術省がEVの充電規格の基準を設けていないこと、国家送電網に負担をかけない電力供給システムが未整備であり、今後EV利用者が増加した場合、電力需要のピーク時を避けて充電しなければならない等、課題も多くあります。

ビンファストの販売店
実際に、ベトナムでEVの販売を打ち出している企業はまだ少なく、ベトナム大手不動産グループ傘下のビンファストやドイツ企業のメルセデス・ベンツやアウディ等に限られています。今回のレポートでは、ベトナムでEVに特に注力している、ビンファストを取り上げます。
ビンファストは2017年9月よりベトナム北部のハイフォン市で自動車工場の建設を開始し、2019年6月よりベトナムローカル企業として初めて自動車の販売を開始した新興企業です。2021年にはベトナム国内初のEVを販売し、2022年8月にはガソリン車の生産を廃止しました。今後の世界情勢を踏まえたこの大きな決断は、ベトナムでも大きく取り上げられました。2022年11月にはEVの世界販売を開始し、ベトナムだけでなく、世界へ輸出しています。ビンファストのSUV(VF8)の価格帯は4万2200米ドル(約570万円)からで、競合モデルのテスラのSUV(モデルY)に比べると1万5000米ドル(約200万円)以上安く販売しています。
実際に、筆者も街中でビンファストの車を最近多く見かけるようになりました。ビングループが運営するショッピングセンターやコンドミニアム等にEV充電器スタンドが設置されており、全国63省市の3,000カ所に15万基の充電器スタンドを設置することを表明しています。
また、EVの生産においては、外国企業の技術導入を進めており、リチウムイオン電池については韓国のLG化学と、EV用全個体電池パックの製造においては台湾の輝能科技(プロロジウムテクノロジー)と組んでいます。日本企業との連携は今の所発表されていません。
- 最後に
ベトナムの新車販売台数は2021年に約41万台と日本の新車販売台数の約422万台と比べると、10%以下の市場規模ですが、2014年と比較すると、2.6倍の成長をしており、今後も成長が見込まれる市場です。ベトナム自動車工業会(VAMA)ではEVの生産を2040年までに350万台/年、2050年までに400~450万台/年に引き上げることを見込んでおり、ベトナムにおいても今後EV市場の過熱が予想されます。それに伴い、関連ビジネスの拡大も見込まれ、筆者も引き続き注視していきたいと思います。

ビンファストのEV

充電器スタンド

駐車場内の充電器スタンドエリア
以上
(1米ドル≒135円)
KIRABOSHI BUSINESS CONSULTING VIETNAM CO.,LTD.
福田