第2回「EC市場のマスタープランと現状」

ベトナム駐在員レポート

新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)により、事業環境やライフスタイルの変化を余儀なくされ、最初は戸惑いが多かったものの、今では新常態に適応された方も多くいることと思います。筆者が生活するホーチミン市でも、弊社が4月16日~24日に実施したアンケート調査では全業種平均で50%の企業様が在宅勤務を取り入れられていました。

尚、ベトナムの感染者数は6月18日午後6時現在で342人(治癒数は325人)となっています。

アンケート調査結果(弊社実施)

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◆2025年までの国家マスタープラン ~EC売上高25%成長を目指す~

新常態に遷移する過程において、当地でもEC(電子商取引)に対する注目がさらに高まるなか、ベトナム政府は中期的数値目標として、5月15日、ECの促進を目的に2021年~2025年の国家マスタープランを承認(首相決定645/QĐ-TTg)しました。

2025年までのEC市場規模目標として、ベトナムの人口の55%が ECを利用し、1人当たりの年間利用額600米ドル(約64,200円)を目指し、また、消費者向けの取引(B2C)の売上高は年平均25%成長させ、2025年には350億米ドル(約3兆7千億円)規模にすることで、小売り・サービス売上高のうち10%をECが占めるようにするというものです。

また、EC取引のキャッシュレス決済については、利用率を50%まで高め、そのうち決済代行サービス会社利用の割合を80%まで普及させ、また、ECの全国的な普及も念頭にハノイとホーチミンの2大都市以外の省・市で半分を占めるようにするほか、電気、水道、通信の提供会社の70%が電子契約を展開することを目指す、というものです。

 

◆ベトナムの世帯所得と人口の都市化

消費者である国民の所得に目を向けてみると、安定した高成長を背景に、中間所得層(世帯所得5,000~34,999米ドル)(約53万円~374万円)の割合は、2000年の約10.4%から、2018年には約47.2%にまで上昇しており、特に、上位の中間所得層(10,000~34,999米ドル)(約107万円~374万円)の割合が増加しています(経済産業省の資料より)。

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また、所得増加とともに都市へ人口の集積が進むことでサービスの多様化が実現し、EC市場が一層活性化するものと考えられます。

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◆主要ECサイトの動向

シェアトップはシンガポール企業資本の「ショッピー」ですが、今年6月、地場大手の3位「ティキ」と5位「センドー」が7月にも合併する見通しと地元メディアが報じました。

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(iPrice Group調査資料より筆者作成)

利用拡大を図るプロモーションを繰り返し打ち出すことでシェアトップとなった「ショッピー」。しかし、各社がプロモーションにより激しく顧客・シェアを争う段階にある当業界で、「ティキ」と「センド-」が合併し企業体力が強化するなか、シェアトップをどの企業が手中に収めるのか、また、消費者にとって利便性がどのように向上し生活環境がどのように変化していくのか、そして、ベトナム政府の掲げる計画により事業環境がどのように変化していくのか、今後も注視していきたいと思います。

以上

(1米ドル≒107円)

Kiraboshi Business Consulting Vietnam Co.,Ltd. 山下