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<質問>
昨年末に、米財務省が、ベトナムとスイスを「為替操作国」に認定したと発表されましたが、具体的にどのような内容なのでしょうか?また、輸出入状況について教えて下さい。
<回答>
ベトナムは、2020年12月16日に、米財務省のマクロ経済と為替政策に関する報告書で「為替操作国」に認定したと公表されました。ベトナム中央銀行は、翌17日に、「ベトナムの為替政策は、インフレ率の抑制や、マクロ経済の安定が目的であり、国際貿易で有利な立場を取るためのものではない」との従来の見解を再度強調。「米国が関心を持っている点については、関係機関と積極的に取り組み、相互に恩恵がある関係を目指していく」との方針を示しています。
ベトナムにとって、最大の輸出国である米国からベトナム製品へ追加の関税を課されないよう交渉を継続していますが、米中貿易摩擦によりチャイナプラスワンとして注目されるベトナムにとって、競争力を阻害される恐れのある追加関税回避に向けた対応が注目されています。
- 為替操作国認定
為替操作国の認定を行うにあたっては、米国との物品貿易の輸出入総額が400億米ドル(約4兆1,453億円)を超える国・地域を対象に下記3つの基準を設定し、ベトナムは全てに該当したとして認定されます。
- 物品の貿易黒字額が年間200億米ドル(約2兆726億円)以上
- 経常収支黒字がGDPの2%以上
- 6ヶ月間の為替介入がある(介入総額がGDP比2%以上)
- ベトナムの輸出入
ベトナム統計総局が12月27日に発表した2020年通年の輸出額(速報値)は、前年比6.5%増の2,814億7,100万米ドル(約29兆1,700億円)。輸入は3.6%増の2,624億700万米ドル(約27兆1,943億円)で、貿易収支は190億6,400万米ドル(約1兆9,756億円)の黒字。2020年の輸出を品目別に見ると、「電話・電話部品」が1%減の508億8,000万米ドル(約5兆2,729億円)で最大。「電子・電子部品」が24.4%増の446億6,800万米ドル(約4兆6,291億円)でこれに続いたほか、「繊維・衣類」が10.2%減の294億7,800万米ドル(約3兆円)、「機械・機械設備」が47.8%増の270億4,200万米ドル(約2兆8千億円)など、31品目が10億米ドル(約1,036億円)を超えたとされています。
輸入では、「電子・電子部品」が24.6%増の639億7,300万米ドル(約6兆6,297億円)で最大。このほか、「機械・機械設備」が1.7%増の373億5,300万米ドル(約3兆8千億円)、次いで「電話・電話部品」が13.3%増の165億6,500万米ドル(約1兆7千億円)。輸入が10億米ドルを超えたのは35品目という結果でした。
国別では、下図の通り、最大の輸出国は米国で、同輸入国は中国となっています。
※参考:国別輸出入シェア_ 2020年1-11月
(ベトナム統計総局のデータを基に作成)
- 対米貿易
税関総局によれば、2020年通期の対米貿易では輸入が5.0%減の137億1,300万米ドル(約1兆4千億円)に留まった一方、輸出は770億7,700万米ドル(約7兆9千億円)で25.7%増加。結果、貿易黒字は前年を35.1%上回る水準にまで膨らんでいます。
※参考:ベトナムの対米貿易額推移
(ベトナム統計総局のデータを基に作成)
- 最後に
前トランプ米政権は1月15日に、ベトナムの為替政策に関する調査結果を発表しました。過度な為替介入で輸出に有利となる自国通貨安に誘導し、米国の商取引を制限する「不公正な慣行」だと認定。現時点では制裁関税を課さないものの、検討を続けると説明しています。
バイデン次期大統領の民主党は為替問題に関心が高く、支持団体である労働組合もベトナムの為替操作を問題視しているとされており、今後の動向が注目されています。
以上
KIRABOSHI BUSINESS CONSULTING VIETNAM CO.,LTD.
山下