第10回「ベトナム駐在員給与の較差補填手続きについて」

ベトナムビジネスQ&A

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<質問>

私はこれからベトナムのハノイにある日本本社の子会社のベトナム法人に、社長として出向する予定です。日本本社とベトナム法人の給与負担について気を付けなければいけないことがあると聞いたことがあるのですが、どのような点に気を付けて手続きすれば良いのでしょうか?

 

<回答>

駐在員の給与をベトナム子会社ではなく日本本社で負担している企業も見受けられますが、駐在員の給与負担の基本的な考え方は、労務提供を受けた法人が負担すべきものですので、駐在員の給与は出向先法人であるベトナム子会社が負担することとなります。もしベトナム子会社が給与を負担せずに日本本社が給与を全額負担する場合は、日本本社からベトナム子会社へ経済的利益が供与されたものとして、日本本社に対して寄附金課税がなされます。

一方、ベトナムの給与水準は一般的に日本に比べ低く、出向先法人の給与ベースだけでは駐在員の給与水準を保証できない場合が多々あります。そこで、採用される方法が「較差補填」であり、法人税基本通達 9-2-47には以下のとおり、明記されています。

〇 法人税基本通達 9-2-47 〇

出向元の法人が出向先の法人との給与条件の較差を補てんするため出向者に対して支給した給与は、出向期間中であっても、出向者と出向元の法人との雇用契約が依然として維持されていることから、出向元の法人の損金の額に算入されます。

 

 

 つまり、駐在員の給与水準を保証する上で、ベトナム子会社で負担できない金額については、日本本社で負担した場合でも、日本本社の損金に算入されるものとしています。

次に、ベトナムにおける駐在員給与の較差補填手続きについて具体的に見ていきたいと思います。較差補填手続きについては、①ベトナム法人から日本本社にベトナム法人の給与負担分を返戻するパターン(日本本社から駐在員の口座に給与を全額送金)と、②ベトナム法人と日本本社から別々に駐在員の給与口座に送金するパターンがあります。今回は①ベトナム法人が日本本社に返戻するパターンとして、以下STEP❶~❺の手続きをご紹介します。

STEP❶:自社の海外赴任規定を基に駐在員の海外給与を決定します。

STEP❷:ベトナム法人にて負担すべき駐在員の給与額を調査会社の給与データ等の資料を基に決定します(同一の役職給与のデータを参考)。

STEP❸:任命状や覚書等に日本本社から支払う給与、ベトナム法人から支払う給与(月例給与・賞与)を記載し、ベトナム法人が負担する給与を記載した覚書を日本本社とベトナム子会社にて締結致します。

STEP❹:日本本社はベトナム子会社に出向者の給与請求書を発行致します。

STEP❺:ベトナム法人は覚書等に記載した期限までに負担すべき給与を日本本社に支払います。

 

上記がベトナムにおける較差補填手続きのうち出向返戻金の手続きですが、気を付けなければいけない点が以下2点です。

まず、STEP❷のベトナム法人にて負担すべき給与ですが、日本の国税庁に過少と認定された場合には、日本本社にて寄附金として認定される恐れがある為、調査会社の資料において同一の役職者等の給与データから算出する必要があります。

次に、STEP❹の出向者の給与請求書についてですが、ベトナムでは日本本社へ給与を返戻する場合は、日本本社が作成した請求書をベトナムの銀行に提出しなければ海外送金を受け付けてくれません。また、ローカル銀行ではこのような出向返戻金の手続きを経験したことがある支店も少なく、書類を完備した場合でも手続き自体を断られることもあり、銀行に予め相談して余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。

初めて海外拠点を設立する企業は海外赴任規定やベトナムにて一般的に負担すべき給与、覚書や出向者の給与請求書等の書類作成について不明点も多いかと思います。弊社では各種書類作成のアドバイスを行っていますので、お気軽にお声掛け下さい。

 

以上

 Kiraboshi Business Consulting Vietnam Co.,Ltd. 福田